自然界の微妙な均衡 3
たとえば、尾瀬ヶ原のアヤメ平斜面のキダチミズゴケ湿原のように、泥炭の浅い斜面にかろうじてその泥炭をおさえながら発達している雪田植生的な湿原群落では・・・
人が不用意に立ち入ると、ちょうど、ミズゴケ類や生きた植物の根が古綿を縛る縄のような間は生物共同体の一員として生きのびてゆくことができるのです。
一見、見えない大気の組成や成分から水の中まで、私たちは非生物的な材料・環境要因については、かなり具体的に、新しい測定機械を使って計量化し、把握・考察することが可能になっています。
しかし、そのような個々の自然の構成要因から人間も含めた生物社会・生態系をシステムとして総合的に把握するには、まだまだ現代の科学・技術・医学では、未知の分野、今後解明されなければならない分野がきわめて多いのです。
とくに今までの自然科学は分析科学に片寄りすぎています。
したがって、個々の計量化は可能であっても、それを総合化した生態系、生物社会と環境のトータル・システムとしての立体像を具体的に構築することは、まだ不十分にしかできません。
概念的・理念的に大まかなエネルギーの循環システムあるいは物質の交流、また、人間も含めた生物が地圏と大気圏の生きたフィルターの機能を果たすことなどは、理論的にはかなり明らかに把握でき、部分的には計量化が可能です。
しかし、それを総合して見た場合、小さな湖、一本の小川、あるいは一つの山に対してすら、具体的にそのシステムを具現化することはきわめて困難なのです。
現代の科学はそれに対して未熟であるといえるでしょう。